2011年8月19日金曜日

ついにできた!

 2年生の女の子。来日1年半、昨年秋からU-18に来ています。今まで何度トライしても繰り上がりのある足し算ができませんでした。指をつかってがんばるのですが、何度やってもうまくいかず「もういや、やらない!!」と投げ出していました。彼女は数ヶ月前からそろばんに通っています。そろばんの珠を見ながら数というものを目で実感したおかげか、10までの足し算ならかなりスムーズに行くようになりました。
 
 今日は100マス計算で足し算をやりました。繰り上がりのあるもの、ないものが混ざっています。〜+10=はスイスイできます。1のよこに〜を書けばいい訳ですから。繰り上がりのない足し算もいまや十八番(?)になっています。できるところから埋めていったら、100マス計算のマスが虫食い状態になってしまいました。いつもならここでポイッとなるところです。しかし今日は人手に余裕があったので、ボランティアのW君(彼は子どもの扱いがとても上手です)と二人がかりで、逃亡を許さずおさえこみ(?)ました。そして7+5=なら「7にいくつたすと10になる?」、9+8=なら「9にいくつたすと10になる?」と、一問一問丁寧に聞いていきました。逃げ出しそうになるとW君がじょうずに引き戻します。こうして何問か繰り返していたら、「7+3=10だ!そうすると、5から3なくなったけどまだ2残っている。ということは答えは12?」ついにこのフレーズが彼女の口から飛び出しました!!やったあ!!7+5=7+3+2=10+2となおすこともできるようになりました。


 こうなったらしめたものです。もともと非常にノリの良い(良すぎる)性格ですから、つぎつぎに答えを出していきます。そして言った言葉が「なんだこんなに速くできるんじゃん!」自分で自分に驚いたのでしょう。今までの自分はなんだったんだと思ったのかもしれません。これまで彼女は “集中力のない子” でした。でも今日の姿を見て、うまくできないからいやになっていたんだなあと、あらためて思いました。できるって子どもにとって本当にうれしいことなのですよね。しかもみんなからたくさんたくさんほめて貰えたし。とはいってもこれでしっかり定着したとはとても言えません。これからは「私出来るようになったからもうやらなくてもいいもん!」と言わせないように、いっそう締めて(?)かからねば・・・


 子どもが何かをできるようになった、理解できた、まさにその瞬間をみることができたのには本当に感動しました。(


 

読み聞かせ

 にほんごひろばU-18、夏休みの活動は宿題や日本語学習が中心です。正味2時間、子どもたちはじっくり(?)勉強します。でも「勉強ばかりじゃ疲れちゃうよ」「お楽しみはないの?」という声もあちこちから聞こえてきます。ということでリクエスト(?)に答えて、本日は読み聞かせをタイムをもちました。
 
 協力していただいたのは「安芸津えほんの会」の皆様です。『ペネロペうみへいく』『どろんここぶた』『わゴムはどのくらいのびるかしら』、そして紙芝居『なんでもなおすおいしゃさん』を読んでいただきました。子どもたちの日本語レベルはさまざまですが、絵をじっくりながめる子、読み手の言葉にしっかり反応する子、積極的に茶々を入れる子と、それぞれ自分なりに楽しんだようです。
 一番受けていた(子ども、ボランテイア、読み手の意見が一致しました)のは、『わゴムはどのくらいのびるかしら』。大型絵本で絵が見やすかったのが良かったようです。そして、いろいろなところへ出かけるというストーリーには、いろいろな国から来ている子どもたちの心に何かしら響くものがあるのではないかなあと想像しています。(

 


2011年8月13日土曜日

子どもたちの進路

 8月8日付でがU-18の中学生の様子を報告しました。中学生たちは夏休み中、定例活動以外にもサンスクエアに来て、自主的に(?)勉強しています。その子たちの前に立ちはだかる最大の難関は・・・


 中学生には高校入試というものが目の前に立ちはだかっています。特に中3の子たちは学校の雰囲気が受験一色になっていくこれからが、つらいところです。「高校に行きたい。そして大学も」と強く思っている子は、何とか普通高校へ行けるように支援したいと思いますが、現実は厳しい・・・
 一つでも得意科目(数学や英語)があるとそれに頼り、それでなんとかなると子どもたちは思っているようです。でも広島県の公立高校を受験するなら5科目が必要です。国語、社会、理科は日本語の壁が厚く、どこからとりかかればいいのか、全くお手上げという感じです。ある論文を読んでいたら、2001年の調べでは広島県にも外国人枠があったらしいことが書いてありましたが・・・最近はどうなのか、広島県教委に問い合わせてみたいと思います。
 一方で、「中学でもういいや。高校には行きたくない」と思っている子もいます。このような子を、どう支援したらいいのだろうと途方に暮れてしまいます。日本で生まれ育った子で、日本語が遜色ないとしても、中卒では仕事を探すのは至難の業です。何か技術が学べるところと思っても、その子は何をしたいと思っているのか・・・
 彼ら自身に10年後の自分をイメージさせるのはほんとうに難しいのです。周りにロールモデルがいません。職業選択のための教育も必要だと思いますが、私たちの活動はまだそこまで行っていません。最近の専門学校の募集要項をネットでちょっと見てみましたが、中卒を受け入れるところは非常に少ないです。学力が付いていない。その上日本語もあまり・・となると非常に厳しい現実が待ち構えています。
 このような子どもたちが、これから先、どうしたらこの日本社会で生きていくすべを身につけていけるのでしょうか。きちんと就業することなく職を転々とする・・ということになってしまうのではないでしょうか。そして子どもたちの保護者、学校の先生たちは、このような現実をどうとらえているのでしょうか。(

2011年8月12日金曜日

保護者からの相談

  U-18メンバーのお母さんから、教育相談を受けました。学業がほかの子に追いついていかない。学校の先生から専門家に相談するように言われている」
お母さんは
「私が外国人だから子どもの勉強を見てあげたくても良くわからない。ほんとうにくやしいよ。先生!」
心配で心配でたまらないのに、自分ではどうすることもできない。お母さんの気持ちは痛いほどわかります。
しかし、今の私たちにできることは、その子に にほんごひろばU-18 に来てもらい、ときどきお母さんの愚痴を聞くことぐらいです。


 この前日も、ある子のお父さんが「息子の学業が心配」と相談に来られました。学校に相談に行くのは敷居が高いようです。私たちの活動は、子どもたちの学習支援だけではすみません。このような保護者の悩みをどう聞いて、どう学校や教育委員会に伝えていくか。そんな役割もあると、このごろ思います。(

2011年8月11日木曜日

国語学習の落とし穴?

 本日はU−18の活動日でした。子ども16名、ボランティアも16名。「NHK広島」の取材もあり大盛況でした。NHKは明日(8/12)の朝のニュースで放映されるとか。


 久しぶりに顔を見せた6年生のF君。南アメリカの日系人ですが、ほとんど日本で育っています。日本語も学力も大きな問題はなく、とても礼儀正しい少年です。今日の課題は「平和のとりでを築く」(国語)のドリル。夏休みの宿題です。ボランティアの手が足りないこともあって、初めのうちは1人で黙々と取り組んでいました。ときどきのぞいてみると、丁寧な大きな字で8割方答えが書かれていました。さすがF君、ほとんど正解です。彼には大きな問題は無さそうだなと思いつつ、それでも確認のつもりで最後の問題につき合うことにしました。


設問は『国連ユネスコ憲章には〜〜についてどのように記されていますか?』


 本文には 「国連ユネスコ憲章には「〜〜〜」と記されています」 とありますから、F君も「」の中を抜き出して書こうとしました。国語の設問に答える『テクニック』はきちんと身についています。そんなF君に聞いてみました「国連って知っているかな?ユネスコはどう?憲章って何かな?」彼は怪訝な顔をして答えに詰まってしまいました。


 国連、ユネスコ、世界遺産などは、国語だけでなく社会の時間やTVのニュース、新聞でもよく見かける言葉です。6年生なら何となくでも知っている言葉ではないでしょうか。特に広島県には、宮島、原爆ドームのふたつの世界遺産がありますから、世界遺産のない県の子どもより目にする機会は多いはずです。F君の場合は、なんとなく聞いた(見た)ことはあっても、それを説明する語彙がなかったのかもしれません。
 言葉の意味や文章の内容が理解できなくても、テクニックを知っていれば設問に答える(書く)ことはできます。しかし答え合わせをする時、答えが正解だから安心してしまうと、このような落とし穴が待っています。これは外国につながる子だけでなく、日本人の子でも同じことではないでしょうか。F君がこのまま、正解!良くできるね!安心!と思われてしまったら、彼のボキャブラリーや知識は年齢相応に伸びていかないでしょう。それらがなければ、年齢相応の思考力を身につけることは困難です。F君は大切なことを教えてくれました。設問に『正解』しても、それで安心ではないということです。(

2011年8月8日月曜日

U-18の中学生(以上)たち

 にほんごひろばU-18は7月25日から夏休み体制です。毎週月、木、金の午前中、学校の宿題、日本語学習、遊びなどを行っています。夏休みに入って、子ども、ボランティアともに参加者が増えました。毎回、中学生以上が5〜6人、小学生が7〜8人というところでしょうか。ニューフェースも多く、初めのうちはバタバタしました。最近はいつものペースが戻ってきています。
 今回は常連の中学生(以上)メンバーの様子をお伝えします。比較的高い年齢で来日した子はどのような問題を抱えているのでしょうか。
 
 V君(来日4ヶ月)は数学が得意ですが英語は大キライ!。この‘大キライ’という言い方を覚えた時、彼は、いろいろな形容詞に‘大’をつけようとしました。たとえば、大きれい、大きたない、大大きい(?)とか。「何でこういうのはだめなの?」(大)不満そうでした。超(キライ、きれいなど)なら何にでもつけられて便利ではありますが・・・
 それはさておきV君に「高校入試には英語があるよ」と言うと「母国の高校入試には英語の試験はない!」と口をとがらせます。そのつもりでいたのに、急に英語と言われて戸惑う彼の気持ちはよくわかります。来日当初はそんな不満も口にできなかった(日本語力ゼロでしたから当然ではあるのですが)ことを思えば、不満も大いに歓迎です(いつでも聴くからね)・・・が、現実は厳しいというのが正直なところです。
 
 中学を卒業したC君(来日1年)が半年ぶりに現れたので、ヤッチャル一同ビックリしました。改めて高校入学を目指したいから勉強する!そうです。彼には以前、とても不安定な時期がありました。今は自分のペースでいられるからか、顔つきが穏やかになっています。周りのことに興味を持ち、自ら質問してくる(母語でですが)ようになった姿を見てちょっと安心しました。でも真剣に高校を目指すなら、もうちょっと勉強しないとねえ・・・まあどうにか宿題をやってくるようになったのは大進歩だけど。
 
 Iさん(来日1年半)はV君とは反対に英語(母語ではない)は得意で大好き。将来は英語の先生になりたいとか。でも母国の学校で算数をあまりやらなかったので、基礎、それも最も大切な部分が抜けています。説明(日本語+英語)すれば理解できるので、抜けている部分(実は小学校3〜4年生の内容)をいちから補習中。でもこの『抜け』は、中学ではまったく見過ごされてしまっています。日本と母国のカリキュラムや進度の違い。多くの子が悩まされていますが、日本の学校の先生はそこまで手が回らないようです。ただし数学ばかり2時間もやるとIさんの集中度は目に見えて落ちます。そりゃそうですよね。ということで英語をやりながら日本語の確認をしていくというように、本人の得意科目も入れてバランスをとるようにしています。

  Ch君は来日半年。母国でもあまり学校へ行ってなかった様子。日本へ来てからも、彼を取り巻く環境はなかなか厳しいものがあります。でも穏やかでのんびりし(すぎ)た好少年。おなかが痛い(?)と、学校もU-18の活動もすぐ休んでしまいます。彼はあと半年で中学を卒業します。でも自分の将来を全く描けない様子。もちろん今のまま(日本語、学力ともに)では日本人と一緒の高校入試は全くきついでしょう。かといって就職といっても・・・いったい彼に何ができるのだろう。親に連れて来られたがゆえの子どもたちの苦労(苦悩)。子どもたち自身に責任はありません。だからといって、「かわいそうだねえ」と甘やかしっぱなしにしていては、一歩も踏み出すことはできません。この辺のさじ加減は本当に難しいところです。(
 

2011年8月5日金曜日

東広島消防署見学




 8月4日、東広島消防署を見学に行きました参加者はこども:15名、ボランティア:11名、お客様2名の総勢28名。大盛況でした。
 初めに消防署員のお話を聞き、DVDを見た後、指令室を見学しました(上の写真)。どのように火事や救急の通報が入るのか、どのように火事や救急の場所が分かるのか、とてもよくわかりました。そして実際に自分の住所を言って、指令室の前面にある市内地図から、その住所を探し出す作業を見せてもらいました。自分の家の住所が正確に言えない子もいました(外国人の子には多いです)が、署員の方がその子の隣の家の名字を聞き出して、正確に場所を特定できました。小さな手がかりが大切なことがよくわかります。
最後に、子ども全員がはしご車(高さ25メートルまで上昇)にのせてもらいました(下の写真)。消防車にも乗せてもらい、ボンベやマスクなど装備を装着させてもらったりもしました。みんな大興奮でした。

 子どもたちにはかなり楽しい企画になったのですが、肝心の「火事の時はどうしたらいいか」ということが頭に入ったのかどうか・・・う〜ん、これは大いに疑問です。(