2016年3月23日水曜日

安倍さんの『お言葉』

  ばたばたバタバタ,師走という言葉は日本では12月より3月の方がピッタリくるようです.

 3月22日の教育再生会議で,安倍首相が日本に暮らす外国の子どもたちについて述べました.
「小中学校ではこれまでも手厚い教員配置や研修などを行っているが、今後、子どもたちの力をさらに伸ばし生かすため、高校等での教育も充実し、進学や就労の拡大につなげることが必要だ」
(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160322/k10010452651000.html)
 
手厚い教員配置や研修ってほんとかいな?とは思います.でも今回の注目点は「高校等での教育も充実し,進学や就労の拡大につなげることが必要だ」の方です.
 広島県では,公立高校入試で,外国につながる子どもに対する配慮がありません.受け入れ校,受け入れ枠,試験問題のルビうち,時間延長,辞書持ち込みなど,ほんとうに何にも無いのです(後述しますが,奈良県の先生方が驚いていました!!).

 そんな厳しい環境の中で,今年の高校入試が終わりました.U18に関わった子どもは定時制に3人,全日制2校に1人ずつ合格しました.全日制は東広島地域ではレベルの高い方の高校です.来日5〜6年でこのレベルの高校に受かる実力をつけた2人はすごいです!!

 さらに定時制では奇跡(?)が起きました.一度不合格になった子が三次(欠員)募集に再トライして合格したのです.過去にこのパターンで不合格になったことがあるので,今回,だれもがあきらめムードでした.

 そこに試験日にあわせたような安倍さんの『お言葉』です.もしかしたら(高校の)背中をおしてくれたのかもしれません!逆転合格になり本当によかったです.

 さて,は奈良県に行ってきました.「奈良・子どもの日本語教育ネットワーク」立ち上げシンポジウム(3月20日)に参加するためです.U18でずっとボランティアをしてくれて,子どもたちに人気絶大のYさんが呼んでくれました.Yさんは,今奈良市ではたらいています.久しぶりに会えてうれしかったです.
 シンポジウムには,いろいろな方が参加していました.公立夜間中学教師,自主夜間中学の関係者,特別支援教育の先生,県教委,市教委,大学の先生,ボランティア・・この多様性には,東広島はまだ追いつけていません!!


 奈良の前日,伊賀上野にも行きました.ここはなかなかの活動が展開されています.特におとなのクラスはおもしろかったです.実力のある(自主的に学んだからついた実力です)ボランティアが授業形式で教えています.とはいっても会話中心で楽しそうなおしゃべりが続きます.特に現職校長先生が,身振り手振り,スキンシップも交えながら,本当に楽しそうに授業をしているのには,目を見張りました.忙しいのに,ボランティアが楽しくて仕方が無い!!という感じです.さらに受付では80代の素敵な女性が,てきぱきと学習者を誘導していました.

 多様な人々がうまくかみ合っていけば,ホントに大きな力になるんだなあ・・・これからの東広島の課題です!


朝日の中で@奈良公園


ユーモラスな狛犬
ほっこりする狛犬

2016年3月12日土曜日

私は国に帰りたいです

 みなさんご無沙汰しております.3月になりましたが,まだまだ寒い東広島です.にほんごひろばU18のこどもたちは,相変わらず元気です.今日は中学の卒業式でした.2人が卒業し,在校生たちも出席しました.来週は小学校の卒業式です.子どもたちは新しい世界へと羽ばたいていきます.

 でも,新しい世界になじめず,もがき続けている子もいます.自分の国から日本へ来る.言葉が変わる,文化も変わる.友達と別れる,家族と別れる.子どもにとって,本当に過酷なことです.それを親の一存で強いられてしまう.外国につながる子どもたちの試練と苦悩・・・そんな子どもたちの心の叫びに,私たちはなにをしてあげられるのでしょうか.みなさんも,耳を傾けてみてください

 Kさんは今年18歳。日本に来てからずっと国に帰りたいと言って、日本語の勉強は全くしていません。それでも,U18や日本語教室には時々やってきます.ある日はと話して、少しだけ「~たいです」の文型を勉強して帰りました。この文型を使って彼女が書いたのが私は国へ帰りたいです
これこそ彼女の心の叫びです。

以下はKさんと(ボス)の会話です.会話中の「にほんごわいわい」はおとな向けの日本語クラスの名前です.対話型のクラスで,ボランティアと学習者が楽しく会話をしながら日本語を学んでいます.

K:国に帰りたい。日本語を勉強してもすぐ忘れるし、日本語の勉強は私にはあまり意味がない。
:国に帰っても大丈夫なの?
K:(国の)お父さんには帰りたいと言っている。帰ったらお父さんと一緒に住めると思う。

:お母さんは何と言っているの?
K:日本にいてほしいとずっと言っていて、国に帰るのは許してくれない。1年半前に日本に来た時も、ちょっと遊びに来るだけと思ってきた。でも来てみたら、帰れなかった

:そう・・・
K:おじいちゃんもおばあちゃんもいるし・・友達もいる。日本では友達もいない。
:K君(彼女のボーイフレンド。彼もたまに「にほんごわいわい」にあらわれます)は?
K:いつも昼は仕事だし・・・中国の友達と、インターネットでよく話している。

:そうか・・・
K:中国に帰ったら、昼は働いて、夜友達と話したり、どこかに行ったりして楽しく遊べる。

:将来どうしたいの?
K:服飾関係の仕事とか、美容師とかしたい

:そう。Kさんはおしゃれだからきっとあってるね。
K:中国ではダンスを一生懸命やっていた。ジャズダンスなんかやっていて、大会で2位になったこともある。

:へー、才能あるんだね。
K:才能があるかどうかわからないけど、先生に褒めてもらった・・・ダンスは好きだったんだ。

:そうなの・・日本でも習ってみる?西条にもダンススタジオがあると思うよ。
K:うーん。もう一年以上もやってないし・・日本語わかんないしね・・

:ダンスは日本語いらないじゃん。
K:そんなことないでしょ。ダンスはすきだけど、日本で習わなくてもいいよ。とにかく帰りたいんだ・・日本語も勉強したくない。

:1日家で何してんの?
K:ごろごろしてる。10時か11時ごろ起きて・・インターネットしたり、インターネットで中国のテレビ番組見たり

:若い人が一日なにもしないのは体にも、心にもよくないよ。ちょっとさ、私の助手とかしない?
K:何するの?

:日本語わいわいに来てさ、助手しようよ。
K:だって日本語勉強したくないし・・・

:いいよ勉強しないで。わいわいは結構忙しくて、一人だと大変なんだ。
K:ふーん。

:名前のカード配ったり、おかしくばったり。机を並べ替えたり・・結構いろいろやることあるよ。
K:ふーん。

:来てみない?どうせ暇でしょ?
K:そうだね。家にいてもつまんないし・・・

:じゃあおいでよ。まってるよー。
K:うん。

こんな会話を火曜にして、水曜のにほんごわいわいに来るかなあ・・と半分あきらめていたのですが、やってきました。金曜の午前のにほんごわいわいには来なかったのですが、夜のクラスには参加しました。帰りのバスの中で・・


:どうだった?
K:まあまあだね。

:また来てみる?
K:うん。そうだね・・・



「ちょっと遊びに来るだけと思ってきた。でも来てみたら、帰れなかった。」
多くの子がこのように,だまされたような状況で日本に来ています.いくら子どもだからって,これはないでしょう.

 Kさん,ほんの少しでいいから,家から外に出てだれかと触れあってみようよ.にほんごわいわいのクラスは♪が担当しているからね.待ってるよ!!


酒処西条は新酒の季節です!!