2013年6月29日土曜日

忘れた頃にやって来るあいつ

 このところ、久しぶりの子どもたちが立て続けにやってきた。AI君、ISさん、CK君などだ。AI君は1年振りくらいだろうか・・・
 3人のうち、AI君とCK君は中学生。2人の言いぐさはこうだ。
「普段は部活があるから来られないよ。今週は定期テスト前で部活がないからね。早帰りさ。勉強わかんないから教えてよ」 
 
 AI君は運動部で活躍している。中学に入学した頃はがりがりの体型だったので、ヤッチャル一同、ハードな部活でやっていけるかと心配したのだが・・・いまや部ではエース、加えて持ち前の茶目っ気を発揮して、クラスではいたずらの先頭に立っている。もともとモーレツな早口でおしゃべりな子だが、部活で鍛えられて、その日本語にはますます磨きがかかった。今日も広島弁丸出しで息つく暇もなくしゃべりまくってくれた。日本の学校にどっぷりつかり、勢力的に活動した証しである。彼に初めて会う大学生ボランティアたちは、そのマシンガントークに圧倒された。そんな彼でも
「部活引退したらここ(U18)しか来るところないから、 夏休みになったらまた来るよ。勉強教えてください。高校行きたいし」
『ここしか来るところない』というのは、泣かせるセリフだ。ヤッチャルがU18で目指しているのは学習支援だけでなく、子どもたちの居場所、心のよりどころ作りだ。だからこう言われると素直にうれしいけれど、一方でちょっと複雑な心境にもなる。「U18に来なくても自分は大丈夫、一人でやっていけるよ」でもいいんだけどね・・・というか究極の目標はここだろうとは思う。
 でも一緒に歴史を勉強してみたら、やはり、まだまだ自力で大丈夫とはいかないようだ。あの弾丸広島弁でも、日本語(第2言語)での学校の勉強には苦戦している。それほど、第2言語での学習というのは、一筋縄ではいかないものなのだ。

 U18には常連さんもたくさんいるが、AI君、CK君のような、ふらっと立ち寄り派も結構いる。忘れた頃にやってくるのが、災害でないのは喜ばしい。みんな、いつでもおいで、待ってるよ(


2013年6月20日木曜日

東広島に放送局がある!?!ーFM 東広島ー

 昨日(2013/06/19)、地元のラジオ、FM東広島に出演しました。あるんですよね!東広島にラジオ局が。毎日7:00〜22:00、完全生放送。開局は2011年10月ですから、まだ2年に満たないフレッシュな放送局です。実はヤッチャルには、すでに出演経験者が3人も(?)いますと留学生のIさん。この出演率からもわかるように(笑)、完全地域密着型、地元情報満載のコミュニティFM放送局です。ただし3人ともヤッチャル&U18からの出演ではありませんでした。
 今回は午後の時間帯の番組「Eastじゃけん」の中にある『ふるさと応援隊』というコーナーに出演しました(じゃけんは、おそらく広島弁の中で認知度No1の言葉でしょう)。ふるさとでがんばっている人やグループを紹介して応援するという趣旨のコーナーです。中国からの留学生Yさんの二人で行ってきました。ヤッチャル&U18としては、FM東広島初登場です!!

 まずはヤッチャル&U18設立の経緯、U18の活動内容を紹介してから、Yさんに話が振られます。
「子どもたちの反応はどうですか?やっていて大変なことはありますか?」
「日本語がある程度話せる子とはコミュニケーションがとれますが、来たばかりで話せない子とふれあうのはとても難しいです。でもそういう子から先生!ってよばれると、通じ合ったみたいでうれしいですね」

 Yさんの日本語力は折り紙付きですが、それでも自分の母語ではない日本語で子どもたちとコミュニケーションするのは大変です。実は最近のU18には、中国から来た子が少ないのですが、そういう子には母語で対応できるYさんがいると安心なのです。

 次はインタビューの核心「日本語の勉強で大切なことはなんですか?」
これは私が一番伝えたかったことです。東広島には大人も子どもも、日本語を学んでいる人がたくさんいます。その中で、子ども、特に日本の学校に通っている子どもには、特別な注意が必要です。へたをすれば、自分の言葉、日本語、両方が中途半端になる危険性(いわゆるダブルリミテッドですね)があるのですが、これについては、まだまだ一般には知られていません。多くの人が「子どもは覚えるのが早いねえ、半年でペラペラになるんだねえ」と、子どもの言語習得のスピードに感心しています。でも、子どもにとって大切なのは、実はそこから先なんだということを力説してしまいました。
 パーソナリティーの方は「結構重いお話なんですね」と驚いた様子でした。そこで
「実際のU18は、いつも明るくにぎやかで、子どもたちは元気いっぱい、そして案外のんびりとした活動です」
「そうだろうと思います。Yさんの明るい雰囲気を見るとよくわかります」
安心した様子で笑っておられました。

 再びYさんへの質問「これからも活動を続けていきたいですか?」」
「はいやりたいです。自分の勉強にもなります。私は子どもが大好きなんです!!」

 そうですね。本当にYさんの言うとおりです。地域日本語教室では、どうしても日本人ボランティア=先生、外国から来た方=生徒という構図になりがちです。でもヤッチャルでは、みんながボランティアとして、活動の中で人の役に立ち(貢献)ながら、自分が学んでいます。
 そして最後に、Yさんの口から、私が一番好きな言葉が飛び出しました。
『子どもが大好き』
Yさん本当にありがとうね。これはうれしかったな!!

 FM東広島には、ホームページやブログがあります。『FM東広島』と検索すればすぐ出てきます。その中に出演者の写真が掲載されているコーナーがあり、近日中に私たちもアップされるはずです。お時間(興味??)のある方は探してみてくださいね。

 最後にFM東広島のみなさん、ありがとうございました

2013年6月7日金曜日

子どもは親を選べない

 早いもので、6月になって1週間が経つ。新学年が始まって丸2ヶ月、U18の参加者には新顔が増えた。人数が増えれば活動には活気が出る。子どもたちは仲間が増えて喜んでいる。しかし、ヤッチャルとしては喜んでばかりもいられない。むしろ最近は新人が来る度に、溜息をつくことが多い。なぜならU18に飛び込んでくるのは、何か問題を抱えている子がほとんどだからだ。たとえば
  1.  中学卒業後、どこにも行き場のない子
  2.  苦労して(定時制)高校に入ったのにやめてしまった子
  3.  就学年齢なのに学校に通っていない子(不就学)
  4.  親が夜勤で、夜、家にいるのは子どもだけ
  5.  離婚、再婚で両親の間をたらい回しになり、日本と母国の往復を繰り返す子
  6.  社会的に良くない行動をした子
  7.  日本と母国を複数回往復→年齢相応の教科学習ができる言語を持たない子
  8.  低学年で日本の学校に通い、母語がおぼつかなくなっている子
  9.  高学年で来日し、日本語、母語、教科学習が中途半端になり学習意欲減退の子
 思いつくままに列挙してみたが・・・こう見ていくと、全国で問題になっていることが、東広島でも起こっている。最近群馬県でおきた悲劇(親が日本に子どもをおいて母国に一時帰国した間の出来事)は、本当に心が痛いできごとだが、東広島でもあのようなことが起こらない保証はどこにもない。
 
 U18の子どもたち(と言うより、日本にいる外国につながる子どもたち)は、ほとんどが親に連れられて日本に来ている。子どもは親を選べない。自分の意志でなく連れてこられたのに、こんな状況になってしまうのは、子どもにとって本当に理不尽なことだろう。ただしこれまでU18の子どもたちから、親に対する恨み辛みを聞いたことはほとんどない。むしろ「日本に来たらお母さんと一緒に暮らせるからうれしい」と言う子もいた。おそらく心からそう言ってるのだろうが、なんとも複雑な気持ちにさせられてしまった。
 もちろん親には親の事情がある。経済的事情、社会的事情(内戦の続く国から来た子もいる)もある。さらに親の危機感の薄さが、常識や習慣の違いから来る場合もある。
 そうした事情や違いを認めたとしても・・・それにしても親たちは、子どもを異文化、異言語の世界に放り込んだらどうなるか、来日前に想像したことがあるのだろうか。いやむしろ、どういう現実が待っているか知らない(想像できない)から、国(文化や言語)を超えて子どもを移動させることができたのかもしれない。それは受け入れ側の日本社会全体にも言えることだ。大人(≒労働力)を入れたら、そこに子どもがついてくる(生まれる)と想像しなかったのだろうか。知らないというのは、ある意味強いことだけれど、取り返しのつかない過ち(罪)にもなると改めて思う。

 このところ、不就学、深刻なダブルリミテッド、短期間での日本、母国往復など、子どもの責任じゃないのに!と思えることに、立て続けに出会っている。そんなこんなでつい話が暗く、愚痴っぽくなってしまったが、とにかく、これだけは声を大にして言いたい。
「子どもは親を選べない!」
「子どもはすぐ慣れる。子どもはすぐ言葉を覚えるなんてありえない」(

アメリカの本屋にて:日本語の学習書