2013年5月17日金曜日

ヤッチャルの辞書に『見学』という言葉はない!!

 今週の定例活動には来訪者がありました。

 2013年5月14日(火):定例活動の日。子どもたちは新顔も加わり全部で17名の大盛況。大学生ボランティアもフレッシュな顔ぶれが増えましたが、それでもこの人数になると手が回らなくて、いつもはてんやわんやになってしまいます。しかし、この日は頼もしい助っ人(?)がいました。

 いつもU18の活動に積極的に参加して、今やヤッチャルに欠かせない重要人物になっている留学生のIさん。ちょっと苦労はありましたが、4月から晴れて大学院生となりました。その彼女の所属するゼミの院生と、そしてなんと(??)担当教官のN氏が、「地域の日本語教育の実情を知りたい、それには地元東広島の現状把握からスタートしよう」と、U18の『見学』に来てくれました。ただし!!、ヤッチャル(U18)の辞書には『見学』という言葉はありません。ましてや今日の『見学』者たちは日本語教育の専門家(の卵)ですから、これ以上の助っ人はありません!!有無を言わせず(笑)手伝ってもらいました。

 いつも感じることですが、子どもたちはボランティアと1対1になると、とてもうれしそうです。憎まれ口ばかりきくような中学生でも、この傾向は顕著です。日頃、何がなんだかわからない状況で学校生活を送っているからでしょう。自分だけに集中してもらえるということが、子どもの心に安心感をもたらすようです。その意味でも、ボランティアが多いととても助かるのです。
 さらに活動後、『見学』の学生さんたちとN先生、で東広島の現状について話し合いをしました。ヤッチャル(U18)の活動を始めて3年になりますが、大学の先生が直々に定例活動見学というのは、今までほとんどなかったような気がします。N先生、本当にありがとうございました。
 
 子どもたちの現状を見ていると、学校(市教委)、ヤッチャルのような民間ボランティア、そして地域の大学(日本語、初等教育、教科教育など教育全般にわたってのアドバイス、リーダーシップ、学生の参加など)の連携は、日頃から急務と痛感しています。しかし、なかなか進まないのが現状です。 そこへふってわいたような、ではなくてIさんの積極的な姿勢から産まれたゼミ生とN先生の参加(見学)。本当に願ってもないことでした。ヤッチャル(U18)は常にオープンです。皆さん、どしどし『見学』に来てくださいね。ヤッチャル一同、手ぐすね引いて待っておりますです(

2013年5月12日日曜日

改めて感じた国境の重み

 早いもので、新年度が始まって1ヶ月以上過ぎ、ゴールデンウイークも終わってしまいました。実はが3週間ほど日本を留守にしていたので、ブログの更新が滞っていました。無事帰国したので再開です。
  
 U18は、新年度も相変わらずにぎやかに活動している。4月からフィリピン、中国、インドネシアなどの子どもたち、ボランティアにも広島大学の新入生など、新たなメンバーが加わった。本当に子どもたちは次々とやって来る。どこでどのようにU18のことを聞きつけるのだろう(まあ、それなりに宣伝もしているが、圧倒的に多いのは口コミである)。そんな新しい子どもたちに出会って、あらためて感じることがあった。それは、みんな親に連れられて国境を越えて日本へやって来たんだなあ、そのことでこれから多くのことを背負わなくてはならないんだなあ・・・ということ。
 
 なんでそんなことを考えたのかと言うと、最高のロールモデルW君 とアメリカで再会したからだ(とても元気だったので安心した)。幼児の頃、親に連れられてメキシコからアメリカへ来た彼。子どもの頃は、正規の形でアメリカにいたのではなかった。だから、学校のオーケストラ(彼はビオラ)が海外公演を企画した時、自分は行かれない(一度アメリカを出国すると再入国するのが難しいから)としょげていた。妹たち(アメリカ生まれでアメリカ国籍保持)が楽しそうにメキシコの親戚訪問の話をしている時、自分はエルパソ(テキサス州にあるメキシコとの国境の町)で待ってるしかないとあきらめ顔だった。幸い今はきちんとした形でアメリカで生活している。だから私も堂々と、勤務先のスーパーの日本進出にのって日本に来い!!と誘っている。
 
 言語、文化、勉強、友達、将来設計、いろいろなことが国境を越える子どもたちにのしかかってくる。その重荷は自らが欲したものではない。親に背負わされたものだ。母国にいたら出会わずにすんだものだ。なかでもW君のように、幼い頃から不法滞在を背負い込まされてしまったら・・・W君は一度も口に出したことはないが、きっと心の中では『なぜ自分がこうならなくてはならないんだ』と苦悩していたに違いない。妹たちは自由にメキシコに行けるのに、そして自分にはなんの責任もないのにと。

 実は今回の旅で、アメリカとメキシコの国境を見てきた。W君がいつも口にしていたエルパソ(テキサス州)ではないが、カリフォルニア州サンディエゴ郊外のSanYshidoroというところだ(メキシコ側の町はTijuana:ティファナ)。サンディエゴからトロリー(電車)に乗って45分ほどで行くことができる。
 この銀色の回転ドア(写真↓)を一押しすれば、そこはメキシコだ。監視の人は誰もいない(一応この先にメキシコの入管がある)。国境を越えるのはなんて“たやすい”ことなのだろう。W君はあの頃エルパソで、こういう『国境』を見つめていたのだろうか・・・

 幸いU18では、今のところこういう状況(不法滞在)にある子はいない。しかしいつかは、そういう子が来るだろう。今いる子どもたちだって、その可能性(危険性)がないわけではない。子どもは親に従うしかない。子どもを連れて国境を越えることの意味を、親はしっかり見つめなくてはいけない。

アメリカとメキシコの国境(徒歩者用)
メキシコ国境へ徒歩で向かう人々

車で行く時はこの標識に従う