2016年5月23日月曜日

数字って難しい!!

 ゴールデンウイークは,もう,はるかかなたになってきた今日この頃です.U18の子どもたちは,元気に学校へ行っています.そして火曜日,土曜日にはわいわいがやがやU18にやってきます.そんな風に元気な子どもたちですが,最近ちょっと気になる子がいます.

 小学校3年のFちゃん.アジアの中央部からやってきて半年.人なつこくて,物怖じせず,ニコニコと話しかけてきます.家庭環境も良く,本当に『子どもらしい子ども』という感じで,クラスでも人気者のようです.

 そんなFちゃんが,今苦労しているのが九九です.日本では九九を習って,何回も何回も練習して,暗唱するのが2年生.3年生なら完全にマスターしていることが求められます.Fちゃんが来日したのは2年生の冬ごろ.母国では九九をようやく始めたという段階だったでしょうか.

 九九をおぼえるのに必要なのは,まず数字がきちんと言えること,読めること(書けることも).Fちゃんは当然,母語で数字をおぼえています.足し算,引き算,少しの九九は,初めは母語でぶつぶつとつぶやいていました.しかし,おそらく大きい方の数字は,言い方も概念もまだ定着していなかったようです.これが今になって影響しているのか,九九の6の段以降がおぼえられません.日本語でも少しずつおぼえているのですが,7×6=43(しちろくよんじゅうさん??)など,惜しい(?)間違いが目立ちます.ただし,これは言い間違いではないようです.答えを書かせてみても,正解でないことも多いです.母語でやっても,書いてみると間違った答えになってしまいます.ということは,どちらの言語でも数字を正しくおぼえていない,九九を暗記していない,さらには数の概念が入っていない可能性もあります.

 もう一つ問題なのは,おぼえ方です.九九の練習では,まず2×1=2(にいちがに),2×2=4(にんんがし)・・・2×9=18(にくじゅうはち)のように,順番に暗唱します(のぼり).繰り返し練習しておぼえます.日本では,その後くだり(「にくじゅうはち」からスタートして「にいちがに」まで),ランダム(さんごじゅうご,ろっくごじゅうし,はちしちごじゅろくなど,段にとらわれずに練習する)もたくさん練習します.
 しかし,Fちゃんは,にく?(2×9=?)と聞くと,にいちがに(2×1=2)から順番に言わないと,「にくじゅうはち」が出てきません(2の段は何とか日本語で言えますが8の段はまだ日本語では言えません).Fちゃんを見ていて,日本式ののぼり,くだり,ランダムの練習方法が,すごく理にかなっているということがよくわかりました.

 は,最近これを身をもって体験しました.
 実はゴールデンウイークにフランスを旅行してきました.フランス語を使うのはなんと30年ぶり.大学の第2外国語以来ですが,少なくとも1から10までの言い方はおぼえています(もちろん11以上も『知って』います.60からの言い方が複雑だと言うことも知っています).でも・・・
 旅行中,「そのケーキ4個ください」のように,数字を言う機会は何回もありました.ところが,いきなり4(quatre,キャトル)がでてきません.un(アン),due(ドゥー),trois(トロワ)と順番に数えてやっとキャトルが出てくる.4(キャトル)でもそうですから,25とかになったら推して知るべしです.さらに,フランス語は60からの数え方が複雑なので,75とか98なんか,もうおてあげっていう感じでした.

 フランスで,Fちゃんの苦労が良く分かりました.日本語は数字の言い方に例外が少ないので,言いやすい,おぼえやすいと思っていましたが,こんな落とし穴があったのです.数字を勉強するとき,1から順番に数えるだけでなく,フラッシュカードのように,ランダムに数字をいう訓練が必要だなと思います.九九も登りができたらOKせず,下りもランダムも繰り返し練習する方がよさそうです.

 <参考までに>の子どもは10才〜12才のとき,学習言語が英語になりましたが,九九は日本語でマスターしていました.彼女は英語で「Twice(two) two are ?」と聞かれたとき,すぐfourと英語で答えられなくても4と書くことは問題ありませんでした.結局九九は今でも日本語でやっています.

 いわゆる臨界期前の子どもの言語(学習言語)を変えることには,非常に大きなリスク(危険性)が伴います.このことを(連れてきた)親は本当に知っているのかどうか・・苦労するのは子どもです.


パリの町とエッフェル塔

「エクレア4つください」」