2013年3月24日日曜日

たくましさが高校入試合格の秘訣(?)

 2013年の広島県公立高校入試が終了した。今年、U18メンバーで受験したのは2人。なんだかんだの紆余曲折はあったが、2人とも同じ定時制高校へ落ち着いた。昨年合格の3人とあわせて計5名が同じ高校に通うことになった。この高校は、定員割れでも不合格者を出す厳しさで知られて(?)いる。大丈夫だろうと思ってはいたが、2人から合格!の報告を聞いた時は、本当にホッとした。


 2010年にU18を始めて3年が経過した。この間、高校受験では5人が定時制に、ひとりが全日制に合格した。中3での来日が3名、母国と日本を2往復が2名(ひとりが全日制合格者)、中1での来日1名である。
 外国から来て日が浅い子どもの場合、日本語力不足はいかんともしがたい。そもそも、たった1年で高校入試に挑むこと自体無謀である。正直に言えば、どうしてこのタイミングで連れてくるのか!もう少し日本の教育事情、そして子どもの人生を考えて欲しい!と思わずにはいられない(もちろん、そうしたくてもできない事情がたくさんあるのだろうが・・・)。
 加えて広島県の公立高校入試は、漢字のルビうち、時間延長、辞書持ち込みなどが認められていない。この状況では、教科の試験で実力相応の点数をとることは、ほぼ不可能である。その結果、教科学習面では、自分本来の実力とはみあわない高校へ進学する子もいる。数学『命』のTV君を見ていると、宝の持ち腐れでなんとももったいない(ただし、数学、理科以外の教科は、今の高校でじっくり基礎からやる方が良い)。ただし国語となれば、全日制進学を果たした実力者SC君ですら、現代国語や古文は手に負えないと嘆いている。教科による大きなアンバランスは、こうした子どもたちの特徴だ。
 
 それでも日本社会で生きて行くのなら、何が何でも『高卒』になってもらいたい。そう思ってU18では、高校受験希望者を一生懸命応援してきた。親の都合、社会のルールに振り回されながら、高校入試に合格した5人は、本当によくやったと思う。
 
 5人に共通して言えることは、中学の出席率が良いことだ。どの子も1〜3年間で、欠席日数が片手で足りてしまう。一言もわからない言葉に囲まれながらの(ほぼ)皆勤賞。高校入試でも、この点は大いに評価されているにちがいない(私の推測だが)。
 毎日学校へ行って日本語に囲まれていれば、自ずと日本語の力も上がってくる。「私が貴校を志望した理由は〜〜」など、面接独特の日本語もみんな必死で覚えた。その日本語レベルから見たらあり得ない単語、なぜ『貴』なんていうのか、その意味すらよくわかっていない。それでも入試本番では、堂々とこの言葉を使ってのりきった。

 5人を見ていると、私の頭にわが子の言葉が浮かんでくる。
「いきなり日本人の全くいない外国の学校へ投げ込まれて、一言もわからない言葉に囲まれて毎日を過ごす。あの大変さは経験した人にしかわからない。『あれ』を乗り切ったことは自分の自信につながっている。『あれ』より大変なことなんて、そうはないぞ!!と思えるからね」
 5人も『あれ』を乗り切った子どもたちだ。その一番の持ち味はたくましさ!合格後、さっさとアルバイトを決めるなど、日本人の子でもなかなかできることではない(脱帽)

 でも高校生活はゴールではなく始まりだよ。自分の夢を叶えたかったら、アルバイトだけでなく、もっともっと勉強しなくちゃね!一緒に勉強したいと思ったらいつでもU18にもどっておいで。待ってるよ(

 

2013年3月20日水曜日

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 U18のSIさんたちが、パスポートを更新することになった。日本に来てちょうど3年になる。その国では16歳以下の子どもの場合、パスポートの有効期間は3年だそうだ。

「わからない言葉があるから助けてください」
SIさんから差し出された申請書類は英語で書かれていた。公的手続き書類独特の単語や言い回しがかなりたくさんある。これを読みこなして必要事項を記入するには、それなりの英語力が必要だ。SIさん一家の英語力では、かなり苦しいとお見受けした。
 SIさんの国は、世界に名だたる多言語国家である。一家の母語も英語ではない言語だ。おそらく本国で申請すれば、他の言語で書かれた書類があるのだろうが、日本では入手できなかったのだろうか?

 記入項目のうち名前、生年月日、誕生地、現住所などは、どこの国でも共通だ。これは問題なくできる。他には目の色、身長、目につく特徴(あざや傷跡などだろうか?)などの身体情報を書き込む欄がある。日本ではこういうのはあまりお目にかからないが、世界的に見ると結構一般的なのかもしれない。そういえば、アメリカの運転免許申請でも、身長、目の色などを書かされた。余談だが、私は156cmと書いたら、見事に突き返されてしまった。5.2と書かなくてはいけなかったのだ(5フィート2インチのことです)。アメリカは、数少ないメートル法が通用しない(にくい)国だったのだ。

 子どもの申請書には親の同意(承認)が必要である。日本ではこういう場合は、署名、捺印だが、外国ではサインが一般的だ。日本の印鑑証明にあたるNotarization(サイン認証)が必要な場合もある。SIさんの国の書類では、サインまたは拇印 thumb impression 略してT.I.)と書かれていた。これは初めて知った。文字が書けない人への配慮なのだろうかそう言うと、(同席していた)SIさんのお父さんは深くうなずいた。識字率が平均70%台だから、当然と言えば当然の配慮なのだろう。おもしろい(?)ことに、男性は左手の親指、女性は右手の親指となっている。なぜだろう?

 お役所への申請には、その国の言語事情が如実に表れる。SIさんたちの様子を見ていたら、日本という国のシステムが、だれもが日本語を読み書きできることを前提にしているということを、あらためて痛感させられた(