2013年3月20日水曜日

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 U18のSIさんたちが、パスポートを更新することになった。日本に来てちょうど3年になる。その国では16歳以下の子どもの場合、パスポートの有効期間は3年だそうだ。

「わからない言葉があるから助けてください」
SIさんから差し出された申請書類は英語で書かれていた。公的手続き書類独特の単語や言い回しがかなりたくさんある。これを読みこなして必要事項を記入するには、それなりの英語力が必要だ。SIさん一家の英語力では、かなり苦しいとお見受けした。
 SIさんの国は、世界に名だたる多言語国家である。一家の母語も英語ではない言語だ。おそらく本国で申請すれば、他の言語で書かれた書類があるのだろうが、日本では入手できなかったのだろうか?

 記入項目のうち名前、生年月日、誕生地、現住所などは、どこの国でも共通だ。これは問題なくできる。他には目の色、身長、目につく特徴(あざや傷跡などだろうか?)などの身体情報を書き込む欄がある。日本ではこういうのはあまりお目にかからないが、世界的に見ると結構一般的なのかもしれない。そういえば、アメリカの運転免許申請でも、身長、目の色などを書かされた。余談だが、私は156cmと書いたら、見事に突き返されてしまった。5.2と書かなくてはいけなかったのだ(5フィート2インチのことです)。アメリカは、数少ないメートル法が通用しない(にくい)国だったのだ。

 子どもの申請書には親の同意(承認)が必要である。日本ではこういう場合は、署名、捺印だが、外国ではサインが一般的だ。日本の印鑑証明にあたるNotarization(サイン認証)が必要な場合もある。SIさんの国の書類では、サインまたは拇印 thumb impression 略してT.I.)と書かれていた。これは初めて知った。文字が書けない人への配慮なのだろうかそう言うと、(同席していた)SIさんのお父さんは深くうなずいた。識字率が平均70%台だから、当然と言えば当然の配慮なのだろう。おもしろい(?)ことに、男性は左手の親指、女性は右手の親指となっている。なぜだろう?

 お役所への申請には、その国の言語事情が如実に表れる。SIさんたちの様子を見ていたら、日本という国のシステムが、だれもが日本語を読み書きできることを前提にしているということを、あらためて痛感させられた(