2016年3月12日土曜日

私は国に帰りたいです

 みなさんご無沙汰しております.3月になりましたが,まだまだ寒い東広島です.にほんごひろばU18のこどもたちは,相変わらず元気です.今日は中学の卒業式でした.2人が卒業し,在校生たちも出席しました.来週は小学校の卒業式です.子どもたちは新しい世界へと羽ばたいていきます.

 でも,新しい世界になじめず,もがき続けている子もいます.自分の国から日本へ来る.言葉が変わる,文化も変わる.友達と別れる,家族と別れる.子どもにとって,本当に過酷なことです.それを親の一存で強いられてしまう.外国につながる子どもたちの試練と苦悩・・・そんな子どもたちの心の叫びに,私たちはなにをしてあげられるのでしょうか.みなさんも,耳を傾けてみてください

 Kさんは今年18歳。日本に来てからずっと国に帰りたいと言って、日本語の勉強は全くしていません。それでも,U18や日本語教室には時々やってきます.ある日はと話して、少しだけ「~たいです」の文型を勉強して帰りました。この文型を使って彼女が書いたのが私は国へ帰りたいです
これこそ彼女の心の叫びです。

以下はKさんと(ボス)の会話です.会話中の「にほんごわいわい」はおとな向けの日本語クラスの名前です.対話型のクラスで,ボランティアと学習者が楽しく会話をしながら日本語を学んでいます.

K:国に帰りたい。日本語を勉強してもすぐ忘れるし、日本語の勉強は私にはあまり意味がない。
:国に帰っても大丈夫なの?
K:(国の)お父さんには帰りたいと言っている。帰ったらお父さんと一緒に住めると思う。

:お母さんは何と言っているの?
K:日本にいてほしいとずっと言っていて、国に帰るのは許してくれない。1年半前に日本に来た時も、ちょっと遊びに来るだけと思ってきた。でも来てみたら、帰れなかった

:そう・・・
K:おじいちゃんもおばあちゃんもいるし・・友達もいる。日本では友達もいない。
:K君(彼女のボーイフレンド。彼もたまに「にほんごわいわい」にあらわれます)は?
K:いつも昼は仕事だし・・・中国の友達と、インターネットでよく話している。

:そうか・・・
K:中国に帰ったら、昼は働いて、夜友達と話したり、どこかに行ったりして楽しく遊べる。

:将来どうしたいの?
K:服飾関係の仕事とか、美容師とかしたい

:そう。Kさんはおしゃれだからきっとあってるね。
K:中国ではダンスを一生懸命やっていた。ジャズダンスなんかやっていて、大会で2位になったこともある。

:へー、才能あるんだね。
K:才能があるかどうかわからないけど、先生に褒めてもらった・・・ダンスは好きだったんだ。

:そうなの・・日本でも習ってみる?西条にもダンススタジオがあると思うよ。
K:うーん。もう一年以上もやってないし・・日本語わかんないしね・・

:ダンスは日本語いらないじゃん。
K:そんなことないでしょ。ダンスはすきだけど、日本で習わなくてもいいよ。とにかく帰りたいんだ・・日本語も勉強したくない。

:1日家で何してんの?
K:ごろごろしてる。10時か11時ごろ起きて・・インターネットしたり、インターネットで中国のテレビ番組見たり

:若い人が一日なにもしないのは体にも、心にもよくないよ。ちょっとさ、私の助手とかしない?
K:何するの?

:日本語わいわいに来てさ、助手しようよ。
K:だって日本語勉強したくないし・・・

:いいよ勉強しないで。わいわいは結構忙しくて、一人だと大変なんだ。
K:ふーん。

:名前のカード配ったり、おかしくばったり。机を並べ替えたり・・結構いろいろやることあるよ。
K:ふーん。

:来てみない?どうせ暇でしょ?
K:そうだね。家にいてもつまんないし・・・

:じゃあおいでよ。まってるよー。
K:うん。

こんな会話を火曜にして、水曜のにほんごわいわいに来るかなあ・・と半分あきらめていたのですが、やってきました。金曜の午前のにほんごわいわいには来なかったのですが、夜のクラスには参加しました。帰りのバスの中で・・


:どうだった?
K:まあまあだね。

:また来てみる?
K:うん。そうだね・・・



「ちょっと遊びに来るだけと思ってきた。でも来てみたら、帰れなかった。」
多くの子がこのように,だまされたような状況で日本に来ています.いくら子どもだからって,これはないでしょう.

 Kさん,ほんの少しでいいから,家から外に出てだれかと触れあってみようよ.にほんごわいわいのクラスは♪が担当しているからね.待ってるよ!!


酒処西条は新酒の季節です!!