2012年11月21日水曜日

わかる vs できる

 昨日(11/20)はU18の定例活動日。相変わらず元気な子どもたちです。このところ、低学年、しかも同じ国の子が多いので、1時間ほど宿題をすると、一気に遊びモード突入。いきいきと(母語で)遊んでいる子どもたちを見ていると、微笑ましくはありますが、これでいいのかなあとボランティア一同はため息をついております。
 
 さて、2年生の宿題を見ていて、ちょっと感じることがありました。A君は来日1年ほど、生活や遊びに必要な日本語はだいぶわかって来ました。いつも非常に元気で、大声であちこちにちょっかいを出すので、大変うるさい!!のですが、その一方で頭の回転が速く集中力もすごく、可能性を感じさせる子です。
 2年生のこの時期、算数の宿題は一桁のかけ算(九九)が中心です。宿題プリントの計算問題は、自分で軽々とこなします。日本語の九九は、時々言いよどむことはありますが、何とか言えるようになってきました。しかし、算数の宿題の半分は文章題、ここで手が止まってしまいます。
 「おにぎりが4個のっているさらが8さらあります。おにぎりは全部で何個あるでしょう?」
一皿の絵が描いてあるので、『おにぎり』はわかる。『さら』は?という顔をしましたが、これも絵を見て納得。そして「全部っていうのはね・・・」と説明しかけたところで、そんな説明はまだるっこしいとばかりに、4×8=32 答えは32、これでいいんでしょ、と次に進もうとします。答えに『こ』を入れさせる(32個)と、答えには単位が必要ということはいち早く理解。しかし個が何を意味するかには全く関心なし。
 そして次の「一そう(艘)のボートに人が5人→6そう→全部で何人?」」という問題も、問題文は全く読まず(もちろん、自分一人では読めないのですが)5×6=30、30の後にはなんて書くの?この手で一気にすごいスピードで5問終わらせ、できた!終わり!
 パターン(かけ算して合計を出す)を見抜いて、問題文の数字をそれに当てはめる。理解力の高いA君には、この宿題は楽勝となりました。彼自身もできた!と思ったことでしょう。そして、プリントに書かれている答えは全部正解ですから、学校でも、特に問題視されることはないでしょう。むしろ、良くできたね!といわれるかもしれません。
 しかし、A君は日本語の文章題の意味を本当にわかっているわけではありません。「車が一台、自転車が一台あります。タイヤは全部で何個ですか?」「両手にキャンディーを7個ずつ持っています。キャンディーは何個ありますか?」などという問題に出会ったら(足し算問題ですから、すでに出会っている可能性はあります)、おそらく自分一人ではできないでしょう。タイヤ問題は4+2という計算になりますが、4も2も問題文中には出てきません。キャンディー問題も、両手の『両』の意味を知らなくてはできません。このあたりが「数学(の文章題)は国語力(読解力)が鍵を握る」といわれる所以でしょう。
 
 中学生になっても本質は同じです。「周囲の長さが20㎝の長方形。縦r㎝。横の長さをrを使って表しなさい」。これは中1の問題です(答えは=10-r。20÷2=10→10-rまたは(20-2r)÷2などの方法で求められます。この問題を解くには長方形という言葉を、四角形=辺は4つ、向かい合う辺の長さが等しい、周囲の長さ=縦×2+横×2=(縦+横)×2などと読みかえて(解いて)いく必要があります。この問題に躓いたBさんは、日本滞在年数が長く、年齢相応の日本語力はついている子です。それでも、この読みかえはうまくいきませんでした(自分で言葉に出して説明できない)。中学生になると、使われる言葉、求められる読解力、思考力が一気にレベルアップします。日本人でも苦戦する子は多いです。Bさんとの勉強では、中学の数学=より高度な読解力を痛感しました。

 パターンを飲み込み一見できているように見える→しかし実はわかっていない→読解力に問題有り。日本語が不十分な外国につながる子どもたちだけでなく、実は日本人の子どもたちにとっても大きな大きな問題点ではないでしょうか。子どもたちのできた≠わかったをしっかり見極めたいものです(