2012年1月11日水曜日

家族の名前は?ーぴったりの言葉を知らなくてもー

 ご無沙汰しております.東広島は寒い日々が続いています.みなさまお元気ですか?本年もヤッチャル,にほんごひろばU18をよろしくお願いいたします.
 昨日は2012年最初の活動がありました.インド,ベトナム,インドネシア,中国・・常連メンバーがほぼそろい.いつもの雰囲気で勉強やおしゃべりをしました.インドネシア組は冬休みにスキーに行った(インドネシア仲間でバスを仕立てて)とのこと.とても楽しかったとか.南の国から来た人たちにとっては貴重な体験になったことでしょう.
 ボランテイアの広大生Aさんは昨日めでたく成人式.おめでとう.写真を見せてもらいましたが,赤い振り袖がとてもすてきでした.


 にほんごひろばU18では,勉強に疲れてくると,なんとなくみんなが集まっておしゃべりが始まることがよくあります.昨日も,ISさんが学校の部活でやる活動(なんと,VT君の母国ベトナムについて発表するそうです),たまたま持っていたインド,タイの紙幣の話など,あれこれおしゃべりが弾みました.その中で,印象的だったこと.
ISさんが「ねえ,T君の『家族の名前』はなんて言うの?」
『家族の名前』とはfamily nameの直訳です(ISさんは英語が得意です).つまり彼女が言いたかったのは『T君の名字は何ですか?』ということです.名字という言葉を知らなくても,英語を直訳することで,何とか自分の言いたいことを伝えることが出来ました.


 名字は名前に比べれば,使用頻度が少ない言葉でしょう.「お名前は?」というフレーズは,日本語学習のまさに初日に習いますが,「名字は何ですか?」とは普通使いません.日本人は普通に使う言葉でも,日本語学習者にとっては案外馴染みの薄い言葉というのはありますよね.そんな知らない言葉でも,母語からの直訳,知っている(日本語の)単語を組み合わせるなど,自分の能力を総動員して何とか表現し相手に伝える.この能力は外国語(第二言語)を使う時,必須だと言っても良いでしょう.日本人が外国語を話そうとする時,実は一番不足している能力(と言うか態度)ではないでしょうか.日本語からの単語→単語の直訳だけでなく,もっと柔らかい臨機応変な言葉使いをマスターしたいものです.


 外国語を学習する時,語彙を増やすことは大切です.しかし,なかなか伸びないのも語彙力です.具体的なもの,目に見えるものは入りやすいですが,抽象的なものは大人でも容易には定着しません.まして母語が発達していない子どもの場合,抽象的なものを説明するために必要な語彙を,母語,日本語,どちらでも持ち合わせないことが多いので,ここの壁を乗り越えるのは本当に大変です.それでも,ありとあらゆる自分の能力,自分の知っていることを総動員して(組み合わせて)表現しよう,伝えたいという気持ちと能力(?)があれば,少しずつ道は開けてくると思います.
 一方,子どもたちの相手をする私たちの方は,『家族の名前』という表現が出てきたら,それが『名字』のことだとすぐにキャッチする能力が求められるでしょう.実際に子どもたちが使う日本語は,このようなわかりやすい例ばかりではありません.耳をとぎすまして,繊細なセンサーを持ってないと,子どもたちはいらついてきます.もっともっと修行が必要だな.新年にあらためておもった次第です(