2011年10月14日金曜日

日本語習得方法いろいろ

 日本に来て,初めて日本語に触れて,日本語を使わざるを得なくなって,日本語をどうにか身につけていく子どもたち.子どもによっていろいろな習得のプロセスがある.


 前回に続いてAI君に登場してもらおう.彼は経験アンテナ派だ.小学校高学年で日本に来てから,(テキストなどを使って)系統だった『日本語』の勉強をしたことはない.だから動詞のⅠグループ,Ⅱグループなんて言っても??だし,辞書形,ナイ形,テ形・・・もほとんどわかっていない.小学校での取り出しは,漢字や国語の教科書を使っての読み方や言葉の勉強だった.U-18でも教科の勉強中心だ.
 そんな彼に,最近何回か日本語のテキストに載っている練習問題をやらせてみた.文法チェックはほぼ完璧.動詞の言い換え(マス形,ナイ形,テ形など)もパーフェクトである.彼の真骨頂が出たのは「〜〜の時,『失礼します』と言います」という文を作る問題.「しょくいんしつ(職員室:漢字は書けませんでした)にはいるとき,失礼しますと言います」日本の中学校は礼儀にうるさいからねえ.まさに,日々の生活の中で,実践的に身についた日本語だ.文法チェック,動詞の言い換えも,ルールがわかって言い換えているのではなく,こういう時はこう言うよ!つまりシチュエーション(というか本能的に)で理解している.この言い方はおかしい,こういう時はこう言う!これに理屈はいらない(実は私の非常に親しい人間で,外国で現地語で数年間勉強した人も同じことを言っている.黙読では微妙な時も口に出して言えばわかるのだそうだ).
 彼が日々触れている日本語の量は膨大だ.教室,運動部だけでもすごいのに,TV大好きときている.一番のお気に入りは「世界の果てまで行ってQ!」,「にほんごであそぼ」もずっと見ていたそうだ.


 一方,来日半年,中3で超理系頭の持ち主VT君(9/28のV君改め)は理詰め文法派だ.彼は,自分の頭の中の辞書(文法書)にない言い方を耳(目)にすると,必ず「それ何形?どうやってつくるの?」と質問してくる.この間も「どうやったら「読む」が「読める」になるの?」.こういう質問が出た時,U-18ではがばっちり指導する.一気に可能形の作り方をマスターし,たくさんの動詞で使えるようになる.VT君は,理詰めで納得するタイプである.
 昨日は「い形容詞」を変化させる問題(10問くらい)で戸惑う友だちに,「おもしろい→おもしろかった,おもしろくなかった,でしょ!ぼくより長く日本にいるのになんでわかんないの?」ときた.確かに理詰め派はこういう問題には強い!でもねぇ〜〜
 外国から日本に来て,戸惑うことばかり,出来ないことばかりの子どもたちにとって「良い意味での優越感」は大切だ.こう言ってしまう彼の気持ちはよくわかる.ちょっとくらい自分の方が出来る(優る)ことがなければ,やってらんないよね.
 とは言ってもVT君,今後日本で生きていくのなら,このあたりはもう少しうまく振る舞った方がいいんじゃないかなあ.だんだんわかってくるとは思うけど・・・しばらくはVT君から目を離さない方が良さそうだ.(