2014年6月11日水曜日

正負の計算は手を動かせ!!

 時々,思い出したようにU18に現れるのがKC2君だ.現在中2,中国から日本に来て4年目である.彼自身詳しくは語らないが,来日事情は結構大変なものがあるようだ.それでも(表面上は)穏やかで浮き沈みの少ないタイプなので,いつも『飄々と』行動している.そんなだからこそ,心の中は?と,気に掛かる子でもある.
 U18では,常連というかコアな熱く濃いメンバーだけでなく,彼のようなひょっこり型のバイプレーヤーも結構いる.そんな子が久しぶりに来ると,私たちはほっとする.あの子の心の中にU18は確実にあるんだな!!
 昨日のKC2君の来訪は,安堵だけでなく驚きと喜びを私たちにもたらしてくれた.ほんとうに元気をもらったよ!!
 

 彼はいつものように飄々と現れた.いきなり紙束を取り出してニコニコしている.それは前期(東広島市立中学は2学期制)の中間試験の問題用紙と解答用紙だった.80点台,70点台,60点台,国語だけはそこまで行かないが,5教科総計は余裕の300点超えである.おお〜〜!!日本人でも,こんなにとれない生徒は多いぞよ〜〜!!
 
  実は昨年,彼はちょっと腐り気味だった.テストのたびに20〜30点台が続いたからだ.2年くらいこのレベルの点をとり続けると,多くの子は感覚が麻痺してしまう.悔しさを感じなくなる.「まだ日本語ができないから仕方ないでしょ」サポートする方も「日本語は難しいからね!」となりがちだ.でも,本当にそれでいいのだろうか?じゃあ,いつまで待ってたらいいの?それより,学年相当の実力のある子に,日本語力を言い訳にしちゃうのは,逃げじゃないの?!?

 低空飛行の時代,口では「仕方が無い」と言っていたが,彼は心は相当悔しかったようだ.悔しいどころか危機感もあったのだろう.その証拠に,バイプレーヤーの彼が,この冬から春にかけては,U18や大人の日本語教室に頻繁に現れ集中的に勉強していた.「珍しくよく来るね」と声をかけると,いつものようにニコニコしていた.

 彼の苦手の一つが数学の正負の計算だった.+,−,を組み合わせた計算がこんがらかってしまう.実は彼は,(−5)+(+2)+(−9)−(+7)−(−5)では,うまく()を外す事ができる.しかし()を外して,−5+2−9−7+5の形になると,とたんに手が止まる.計算記号と符号の区別がうまくいってない.
 私は秘策(?)を授けた.とにかく手を動かせ!ゼロからスタートしてマイナスは左へ進め!プラスは右へ進め!つまりこの計算ならゼロから左へ5(−5),そこから右へ2(−3),左へ9(−12),左へ7(−19),右へ5,よって答えは−14.これを何回かやって体で覚えてから,プラス,マイナスの符号をまとめて−5−9−7+2+5として一気に計算した.はじめからこうすれば,手を動かす計算は必要ないだろう.でも,かずの感覚を体で覚えるのも必要ではなかろうか?何より迷ったらここに戻ればいいという単純な方法を知った事で,彼は安心した様子だった.今回のテストでは,計算問題はケアレスミス以外,ほぼできていた.できなかったのは日本語が複雑でわかりにくい文章題だけだ.やったね!苦労した甲斐があった.
 
 なんだかKC2君は一皮むけた感じがする.ブレイクスルーとでも言おうか.まだまだ浮き沈みはあるだろうが,このままいけば地域の県立中堅(〜上位)校を目指せるという目処がたった.やはり今の彼にとって,大きな目標はここになるだろう.ヤッチャルのメンバーは,本当に元気をもらった.こんな瞬間を見届ける事ができるなんて,サポーター冥利に尽きるというもんだ.

 それでも気に掛かる事はある.
「日本人の友達はいる?」
「教室で話す人はいるけど,学校の外で会ったり,遊ぶ人は誰もいないよ」
同年代の中国人の友達もいないらしい.だから,淋しくなるとU18に来るのかな・・・

 バイプレーヤーおおいに歓迎だ(


どこでしょう?