2015年8月9日日曜日

行くのか帰るのか

 毎日暑いですね.子どもたちが夏休みにはいり,U18も8月から夏休みシフトに入っています.いつもの賑わいより,少し静かな感じですす.というのも何人かが中国へ行って,不在だからです.

 いつも元気なH君は『中国につながりがある日本国籍』,日本生まれ,中国育ち.現在中学生ですが,ここ1年は日本にいます.彼が中国へ行く前,一時帰国楽しみだね!と言ったら「先生,僕は中国へ帰るんじゃないよ.中国へ行ってくるんだよ」という答えが返ってきました.なるほど,言葉の使い方に気をつけなくちゃ!!

 中学生のSさん.来日半年,中国籍.彼女は「夏休み,中国へ帰るの楽しみです」と,いそいそと出発しました.

 子どもたちにとって中国は行く所なのか,それとも帰る所なのか,帰国する先は日本なのか,中国なのか,とても考えさせられました.居残り組(5人くらい)は,友達の『一時帰国』をちょっぴりうらやましそうにしながら,黙々と勉強しています.K君は迷(?)コンビのH君不在で,ちょっと元気がありません.でもおかげで集中できる(?)ので,正負の計算をばっちりマスターしました.

 行くか帰るかということでは,おとなの日本語クラスでも,滞日20年のKさんが
「日本滞在は長いですからねえ〜〜」
と言ってました.滞在という言葉のニュアンスがとらえ切れてなかったのかもしれませんが,H君の言葉を聞いた直後のには,これまた考えさせられる発言でした.


 みんな,いろいろな気持ちを抱えて日本に『居る』んですね.

PS.日本国内の移動でも,そんなことがあるなあと思います.東京生まれ東京育ち,茨城県,広島県,アメリカに住んだこともある.帰るところはどこだろう?生まれた東京?でも東京を離れて久しいので,今や完全浦島太郎状態です.さてわたしは,どこに行ったら『帰ってきた』と感じられるのだろう.自信を持って言い切れる場所がないような気がしています・・・

名古屋で食べた絶品たこの丸茹で(日間賀島直送)豪快です!!

2015年7月9日木曜日

思考回避???

 このところ『ひとのこころのわかるやつ』(以下R)がひんぱんにU18に顔を出す.U18だけでなく,水曜日夜の日本語教室(大人向けなのだがU18の中学生も常連)にもやってくる.6年生で来日して現在高校2年生,彼の心境はいかに???

 彼は来日直後,小学校の関係でU18に参加した.彼の周囲に中国語話者の友達はたくさんいたが,ほとんどが帰国者家族で日本生まれ日本育ちであった.彼1人が留学生の子だったので,どことなく違和感があったことは否めない.彼は中学時代,ほとんどU18に来なかった.聞こえてくるのは,学校をサボっている,問題行動を起こしたなど,良くない噂ばかりである.しかし,もともと学力があったからなのだろう,どうにか全日制高校へ合格した(ここまでは,前回触れたことである).

 彼にいろいろ聞いてみた.
「親に日本に行くよ,といわれたときどう思った?」
R「行ってもいいかなと思ったよ.日本ってどんな所かなと思ったから.“好奇心”だよ」
「心配や不安はなかったの?」
R「別になかった.言葉が通じないとか,それがどういうことなのか想像できなかった
「日本にきてからはどうだった?」
R「つまらなかった.言葉はわからないし,勉強もわからない・・・」
「高校はどう?」
R「おもしろくないよ.一応行ってるけど.行かない日ある」
「学校休んだら何してるの?」
R「家で寝てるよ」
「町に遊びに行くんじゃないの?」
R「そんなのめんどくさいじゃん.お金もないし.ただ家にいて寝てるだけだよ」
「将来,やりたいことある?」
R「別にないよ.考えたこともない.アルバイトすれば食べていけるよ」
「でも,アルバイトじゃ,いつ首になるかわからないよ」
R「そういうときは就職する
「就職って,そんなに簡単じゃないと思うけどなあ」
R「大丈夫だよ.とにかくたべられればそれでいいわけだし.考えたってしょうがない

 話をしながら,なんとなくは彼の状態が『腑に落ちて』行く気がした.「将来やりたいこと?」なんていう質問は,彼にとっては愚問中の愚問だったことだろう.彼が5才くらいなら無邪気に「サッカー選手!野球選手!料理人!」と叫べばいい.しかし彼はもう17才だ・・・

 おそらく,彼は『将来は?』と聞かれても,どう考えていいかわからないのだろう.日本人の子なら「ケーキ職人になりたい」という希望を持てば,「料理学校や製菓学校に行く.そのためには高校卒業しなくちゃ.赤点とらないようにつぎのテストは気をつけよう.それともだれかに弟子入りっていう手もあるな」などとそこへ向かって道筋を考える.しかし彼の場合,道筋を考えるための基盤(知識,情報,経験など)が絶対的に不足している.もちろん日本語力の問題が大きいが,家庭環境を含めて他にもその要因はたくさんある.そして彼自身,そのことを敏感に感じ取っているようだ.

 彼の状態を表す言葉として私の頭に浮かんだのは「思考回避」である.彼は「考えてもしょうがない」という言葉を使っているが,考えることを無意識に(?)回避している状態になっている.

 外国につながる子どもたちとつきあっていると,よくこういう言葉を耳にする.
「ほんとに何にも考えていない.アルバイトして手元にお金が入ればいいと思っている.ずっとそれでいいと思ってるの?やりたいことを見つけないと,人生つまらないでしょ」

 そうできればどんなに幸せなことか.しかし,こう言う前に今一度,R君の言葉を思いだしてほしい.子どもたちが『(将来を)考える』ための基盤を与えるのは大人の責任であり,それこそが教育が果たすべき仕事なのではないだろうか・・・

 R君には,これからさらなる試練が待ち受けている・・・(

上海のビル群(にとっては30年ぶりでした)


 

2015年6月16日火曜日

家で一人で勉強するのはむつかしい!!

今日(2015/06/16)はU18の定例活動でした.からの活動報告をお送りします

みなさま、
うっとうしい季節ですが、今日も子どもたちは元気にやってきました。
コミュニケーションコーナー相談窓口のKTさんは

「子どもたちが楽しそうに勉強しているのを見るのはいいねえ」

実はS中学に行っている子たちは、毎週火曜は3時半ごろからコミュニケーションコーナーで学習しています。ということは学校を早退しているわけです(一応学校公認ですが).ただし学習といっても、それぞれ、やることは広げているのですが、半分はおしゃべりを楽しんでいます。おそらく学校では、まだまだクラスメートの話や、授業にはほとんどついていけず、静かに席についているのでしょう。U-18に来るとはじけてしまうのも無理はありません。

今日はしばらく来ていなかった中3のKC君が定期テストの結果を持ってやってきました。点数を聞くと、そこそこの点を取っています。こんな時はまずほめるのが鉄則!

「すごい。よく頑張った!」「前より良くなったじゃん!!」
本人が希望する高校にはまだまだ手が届く点ではありませんが、何とかやる気を出させたい!というのが我々ボランティアの親心です。

K:うちにいるとやる気が起こらないんだよねえ・・
V:そんなのんきなことを言ってる場合じゃないでしょ!1日最低2時間、できれば4時間ぐらい勉強しなくちゃ!
K:えー。そんなに!!!でも勉強のしかたがわからないんだよね~。
V:問題集を持っていたら、1日何ページするとか計画を立てるのよ。計画立てたら持っておいで見てあげるから・・
K:えーっ。大丈夫・・・なんとか・・・やってみようかなあ・・・・


褒めた後にはこんな現実的な会話を交わしました。家庭学習の習慣がない子どもたちが多いのですが、このKC君もその一人。そんなKC君ですが、勉強をちゃんとしないのに、そこそこの点が取れるということは勉強したら志望校にも入れるかも・・・どうしたらそんな気持ちにさせることができるでしょうか・・・

高校生もきています。
今日は半分ボランティアのLS君も入れると3人・・・
一人はいつも問題を抱えているKSさん。今日も来日していたおばあちゃんが帰国し「さびし~い」とやってきました。そして、高校は欠席・・・この子の寂しさをどう受けとめたらいいのでしょうか・・・

それぞれに多かれ少なかれ、いろいろなことを抱えている子どもたち・・・寄り添うことしかできないんだよなあ・・・


このところ,こんな感じで,毎回にぎやかなU18です