2013年8月24日土曜日

お疲れ様でした、ご苦労様でした

 U18のAI君は本当にいいヤツだ。中学では運動部で活躍し、日本人の中学生と変わらない生活を満喫している。そして今、中3の夏、部活を引退して時間ができたので、このところしょっちゅうサンスクエア(U18の拠点)にやって来る。夏休みの宿題を持ってきて、英語、歌舞伎についての調べ物、税の作文と、1日に1つの驚異的(?)ペースで仕上げていく。
 AI君の勉強ぶりを見ていて強く思うのは、わからない時「ねえ、これ何?どういう意味?」とすぐに聞くことができる環境、相手の存在の重要さだ。コミュニケーションコーナー(東広島市の外国人へのサービスを提供し、日本人との交流を深める場所)で勉強していると、そこにいるだれもがAI君の質問に答えてくれる。しかも、英語、日本語の専門家がいたり、居合わせた留学生が国際政治や建築の専門家だったりする。こんな環境、そうそう簡単に手に入る物ではない。外国人の親が子どもの宿題を手助けするのは大変だ。そんな中で、かなりの子どもが『答えを写す=宿題をやる』の状態になってしまっている。それでもやらないよりずっとましだが・・・結局は、教師も親も「日本語がわからないんだからやらなくていいよ」と言っておしまいだ。でも、AI君のようにやる気のある子は、『答え』を求めてコミュニケーションコーナーにやって来る。

 そんなAI君だから、日本語に対するアンテナは相当高い。以前にも大ヒットがあったが、今回、それを上回るホームラン!?が出た。
「ねえ『ご苦労様でした』と『お疲れ様でした』はどういう時に言うの?みんなすごく良く使うけど、どういう時が『ご苦労』でどういう時が『お疲れ』なんだか、おれにはわかんねえよ」
 なるほどねえ。日本語を身体全体で覚えてきた彼ならでは質問だ。コミュニケーションコーナーにいた人からは、いろいろな答えが飛び出した。
「目上→目下はご苦労様かな。AI君が先生にご苦労様でしたって言うのはまずいね」
「それに比べて、『お疲れ様でした』は、比較的誰にでも言うよねえ」
「何かが無事終わった時とか、終わりのあいさつの決まり文句になってるよね」
日本人にとっても、本当に貴重な勉強の機会である。 
「でも、ご苦労様ですお疲れ様ですなら、何かを始める前にも言うことがあるね?」
「そう。遠くから仕事に来た人に、まず一言『遠いところご苦労様です』とかね」
話は尽きない。そんなやりとりの中で、AI君も、何となくニュアンスを掴んだようだ。
 
 そして、納得顔で帰りかけたAI君は、もうひとつ付け加えた。外国人の相談に応じる相談員さんに向かって
「中国の(かた)ですか?」
いやあ本当にやるねえ。日頃は広島弁丸出しで、相手かまわずしゃべりまくっているのに。時、場所、相手によって適切な言葉があるということを、彼はちゃんとわかっていた。それは誰かが教室で教えた物ではない。彼自身が自分で気づいたことなのだ。まさに実践的日本語、私たちみんなが見習いたいものだ(

U18の拠点:サンスクエア東広島、コミュニケーションコーナーもここです!!

2013年8月10日土曜日

宮島水族館

 恒例(?)になりつつある夏休みのバスツアー、今年も行ってきました。ケニア、フィリピン、ベトナム、中国、インド、ブラジル、インドネシアそして日本の8ヶ国、総勢44名の大ツアー(バスの定員は45名でした。ふ〜〜)。行き先は宮島水族館。

 東広島→(バス)→ 宮島口→(フェリー)→宮島。ここまではよかったけど、目的地の宮島水族館はフェリー桟橋からちょっと歩きます。炎天下、みんなヒーハーぶつぶつ!!でしたが、水族館へ入れば冷房が効いていて別世界です。カキいかだ、悠然と泳ぐエイや亀、でっかいトド、アシカなど、こじんまりした水族館ですが、なかなか見応えがありました。夏休み真っ最中とあって、ペンギンふれあいタイムではかなり待ったようですが、みんなペンギンと握手(?)できて感激。さらに特筆すべきはアシカショー。なんと本ブログでおなじみのVT君がアシカとキスをしました。おとなの希望者代表に当選(?)ということでラッキー!

 今回は中学生以上の参加者が多く、 しかも水族館という閉鎖空間でしたから、完全自由行動にしました。それでも誰一人ひるむこともなく、「はい行ってらっしゃい!」と言われてみんな大喜び。子どもたちはホントにたくましいです。
 参加者の中に、来日して1ヶ月足らずのKさん(フィリピン)、Wくん(ケニア)がいました。自由行動大丈夫かなと心配もあったのですが、こちらの老婆心(?)など知ったことかと、愛すべきU18常連組ががっちり仲間に入れてくれました。もとから仲良しの自分たちだけで固まらず、ニューフェースをなんの違和感もなく受け入れてくれる子どもたち。あまりに自然すぎて、ニューフェースの方があっけにとられている感じすらしました。少しだけ覚えた日本語、手振り身振り、お互いが知っている限りの英語、つかえるもの総動員してのコミュニケーションはホントに微笑ましかったです。でもなんといっても、言葉より心なんですね。お互いが仲間になれるのは。あの自然さ、大人はまったくかないません。
  いつも静かで黙々とひらがなの勉強をしているW君が、はにかみながら、おぼえたての日本語で「たのしい」と言ってくれたとき、なんだかジーンとしてしまいました

にほんごひろばU18ご一行様〜〜

宮島到着

宮島のもう一つの見所、五重塔

暑いよ〜〜水族館まだかなあ

水族館到着

おさかなさんがたくさん!!

最後は全員かき氷!!!

2013年7月25日木曜日

大人の日本語教室繁盛中!!

 前回の書き込みで、U18に来る16才以上の子どもたちを、東広島市がおこなっている日本語教室にも誘っているという話を書いた。東広島市にはいろいろなスタイルの日本語教室がある。教室型(日本語教師が教える)、おしゃべり型(ボランティアとの交流のなかで日本語を学ぶ)、One to One (個人レッスンスタイル)などだ。これだけバラエティーのある学びの場を、行政が主体となって用意している自治体は、全国的にも珍しいと言われている。

 昨日はその一つ、毎週水曜日夜開催のおしゃべり型教室へ行ってきた。学習者、ボランティアともに10人ほどの参加者で,狭い教室がちょうど満杯という感じ。男女比は6:4くらいで、男性優位である。人数のバランスが良かったのでほぼ1対1となり、どのペアも話が弾んでいた。U18の16才以上組、W君も黙々と勉強していた。
 昨日参加して、あらためて感じたのは、ホントに世界中いろいろなところから東広島に人が来ているんだなあということ。アメリカ、ナイジェリア、ケニア、スリランカ、イラン、中国、内モンゴル(国籍としては中国)。留学生、家族滞在、技能実習生など来日理由も様々だ。
 多様性という面では、日本語のレベルも同様だ。日本に来て1ヶ月経たないビギナーから、N1受験者までいる。当然、とりあげる話題もさまざまになる。昆虫(蚊、ゴキブリ、カブトムシなど)という、日頃あまり取り上げないテーマで話したグループは、ボランティアからホウ酸団子の作り方を教わっていた。カラオケでいつも英語の歌を所望されてちょっとうんざりしているという人もいた。ビギナーのいくつかのペアは、日付の言い方(23日:23にち、3日:みっかとか、これってホントやっかいだよねえ)に四苦八苦である。
 さらにこの水曜日クラス、最近の特徴は、ボランティアに若手(?)男性が増えていることだ。 日中(午前中)のクラスは、学習者、ボランティアともに女性、主婦層中心になりがちだ。男性が来るとどうしても「めずらしいね」という雰囲気になるし、圧倒的多数の女性のなかでは、居心地もイマイチである(もちろんとても大切にされるんですけどね)。
 日本語教室は人が集まってナンボだから、みんなが集まりやすい時間というのは、教室運営という面では大切な要素だと思う。それでも、単に『集まりやすい時間』というだけでは、これだけの人は集まらないだろう。夜の教室へ行くには、1日の仕事や研究を終えてホッと一息というところで、もう一回疲れた身体と頭にムチを入れなくてはならない。普通なら「あ〜めんどくせぇ〜」である。それでも水曜教室にはみんなが集まってくる。あの多様性、それを認めて受け入れて楽しむことのできる人たち、加えて若手パワーとシニア世代の経験値が適度に混ざり合っている。魅力ある参加者がいるから教室の雰囲気がよくなり、雰囲気が良いから人が集まる。実際、昨日も同じアパートに住む人を引っ張ってきた人がいたり、わざわざお菓子をもって帰国の挨拶に来てくれた人もいた。
 地域日本語教室とは、参加者が創っていくものなんですね(