2012/12/15(土)に広島市に行き、中国にルーツを持つ子どもたちが中国語を学ぶ教室を見学してきました。平日は市立小学校に通い、土曜日は母語学習クラスというのは、日本人の子の海外現地校+補習校のスタイルと似ていますね。
広島市の中心部にある古びたビルの2階。急な階段を上っていくと、そこに『学思』がありました(http://gakusi-web.com)。中国語、英語、美術を教える民間スクールで、それぞれ子ども、大人向けのクラスが複数あります。私たちが見学したのは、中国人の子ども向けクラス。家庭で中国語を使う子どもたちですから、母語(継承語)としての中国語ということになります。小学生対象で、その日の出席者は4〜5年生6人(他に6才未満対象クラスあり)。全員違う小学校に通っていますが、ここでは仲良く勉強していました。子どもたちの中国語レベルは同程度にしているとのこと。教材は中国の小学校1年生用の教科書で、この日は「二頭の子どもライオン」の前半部分。二頭のうち一頭はまじめで勤勉、もう一頭は怠け者という、後半部分が容易に想像できそうな教訓的(?)物語です。普段は日本語禁止ですが、中国語のわからない見学者(♪)に配慮してくださり、この日は先生も子どもも日本語を交えて授業が進みました。子どもたちは「本当?日本語使っていいの?」その顔はなんとなくにこにこしているように見えます。どうやら日本語の方が楽な様子。全員日本の学校に通っていて、うち5人が日本生まれですから、まあ当然と言えば当然でしょう。
子どもたちの翻訳に出てきためぼしい言葉を拾ってみると、たてがみ、独身、ストレス、修業、食いちぎる、なわばり、さらには『おかま』ライオン・・・ニート、肉食系、生活スキルのような最新(?)の言葉もありました。小学校高学年として、日常生活や友達との会話で、日本語に困ることはなさそうです(もちろん個人差はあります)。学習用語はサバンナ、サハラくらいしか出ませんでしたが、これは元が1年生の教科書ということがあるのでしょう。子どもたちが日本の学校でどのように教科学習をしているのか、是非知りたいところです。
先生によれば、一部の親は中国語だけでなく教育全般に、とても高い意識を持っているそうです。そもそも学思に通わせて中国語を学ばせること自体、その表れと言えるでしょう。外国人の親は「母語(継承語)はわざわざお金を出してまで習うものではない。家で使っていれば十分(保持可能)」と思っていることが多いですから。
ここでは熱心な家庭は、親子の会話や基本的な読み書き(保持レベル)にとどまらず、子どもの将来を見据えて中国語を学ばせたいようです(それでも中国語を年齢相応レベルに持って行くのは容易なことではなさそうです・・・)。同時に日本語(教科学習)の方では、塾通いをしての中学受験、さらに難関大学への進学もめざし、実現している家庭もあるそうです。これらは親に経済力とエネルギーがあればこそ可能なことであり(学力や日本語力があればさらに有利)、すべての移住家庭にできることではないでしょう。
以前友人から何度も「中国の親たちは教育熱心!」と聞かされました。しかし東広島では、生活に手一杯で子どもの教育まで頭が回らない親、母語が弱くなり親子の会話が難しくなっている家庭も多く、友人の言葉にあまり現実味を感じていませんでした。しかし今回の見学は『友人の言葉』そのものでした。その落差の大きさ! なんだかとても考えさせられる見学となりました(♪)。
こどものひろばヤッチャルです。外国につながる子どもたちの居場所作りを目指し「にほんごひろばU-18」(広島県東広島市)を開いています。課題山積、悩み満載、笑顔満開・・・目下奮闘中!!!
2012年12月17日月曜日
2012年12月10日月曜日
東広島市119番通報体験講座
このところ寒い日が続いていますね。本日(2012/12/10)の東広島市、最低気温がマイナス3.6℃、うっすらと雪化粧の朝でした。広島市の最低気温は1.2℃(午前2時)でしたから、その差約5℃。東広島って寒いんですよネ!!よく「広島県、瀬戸内海、あったかいでしょう?」と言われるのですが、広島県は結構広いのです。北部へ行くと今日は積雪50㎝くらいのところもありますねえ・・・
*東広島のアメダスの標高は223m、広島市は4mです。
さて、昨日(2012/12/09)は、東広島市で『外国人対象119番通報体験講座』がありました。総勢100人近く、スリランカ、カンボジア、ベトナム、中国、台湾、インドネシア、カナダ、マレーシアなどなど、おとなも子どもも参加して大盛況でした。初めに消防の仕事を学び、実際に119に電話をかける練習。一生懸命練習して言えるようになったはずの住所ですが、数字を言うのは結構大変です。司令センターの方が聞き返すと、立ち往生してしまい「とにかく、はやくはやく!!お願いします」と焦る一コマもありました。そんな時は「サンスクエアのとなり!」「西条駅の前」など、目印になる建物の名前を出すと良いかもしれませんね。それからスリランカ、カンボジアなどでは、消防と救急の電話番号が違うそうです。さらに、救急車が有料の場合もあるとか。日本では無料と聞いて、皆さんほっとしたようです。
その後、新装なった東広島市消防署を見学。昨年見学した旧消防署は手狭だったのですが、新消防署は敷地が格段に広い!!消防車や救急車の出入りがスムーズになったことでしょう。司令室も広くて、見学用の窓もちゃんとあります。
さらに、炊きだし(?)カレーを(ハラールなので、ムスリムの方もみんなおいしそうに)食べて、最後に応急手当講座。本当に盛りだくさんな内容でした。
いちばんみんながやりたがったのは、やはり、はしご車体験でしょうか。真っ青な空にぐんぐん伸びていくはしご車は、とても絵になります。時間が限られていたので残念なことに数人しかできませんでしたが・・・次の機会があったら、是非また参加しましょう。
1日がかりの講座、皆さんお疲れ様でした。本当は、今日学んだことが生かせない方が良いわけですが、知っていると安心ですね(♪)
*東広島のアメダスの標高は223m、広島市は4mです。
さて、昨日(2012/12/09)は、東広島市で『外国人対象119番通報体験講座』がありました。総勢100人近く、スリランカ、カンボジア、ベトナム、中国、台湾、インドネシア、カナダ、マレーシアなどなど、おとなも子どもも参加して大盛況でした。初めに消防の仕事を学び、実際に119に電話をかける練習。一生懸命練習して言えるようになったはずの住所ですが、数字を言うのは結構大変です。司令センターの方が聞き返すと、立ち往生してしまい「とにかく、はやくはやく!!お願いします」と焦る一コマもありました。そんな時は「サンスクエアのとなり!」「西条駅の前」など、目印になる建物の名前を出すと良いかもしれませんね。それからスリランカ、カンボジアなどでは、消防と救急の電話番号が違うそうです。さらに、救急車が有料の場合もあるとか。日本では無料と聞いて、皆さんほっとしたようです。
まずはお勉強から |
消防署の司令室。空中写真で通報のあった住所を特定中 |
毛布を使って急病人を運ぶ練習 |
1日がかりの講座、皆さんお疲れ様でした。本当は、今日学んだことが生かせない方が良いわけですが、知っていると安心ですね(♪)
はしご上昇中 |
高いぜ〜〜〜〜 |
2012年11月21日水曜日
わかる vs できる
昨日(11/20)はU18の定例活動日。相変わらず元気な子どもたちです。このところ、低学年、しかも同じ国の子が多いので、1時間ほど宿題をすると、一気に遊びモード突入。いきいきと(母語で)遊んでいる子どもたちを見ていると、微笑ましくはありますが、これでいいのかなあとボランティア一同はため息をついております。
さて、2年生の宿題を見ていて、ちょっと感じることがありました。A君は来日1年ほど、生活や遊びに必要な日本語はだいぶわかって来ました。いつも非常に元気で、大声であちこちにちょっかいを出すので、大変うるさい!!のですが、その一方で頭の回転が速く集中力もすごく、可能性を感じさせる子です。
2年生のこの時期、算数の宿題は一桁のかけ算(九九)が中心です。宿題プリントの計算問題は、自分で軽々とこなします。日本語の九九は、時々言いよどむことはありますが、何とか言えるようになってきました。しかし、算数の宿題の半分は文章題、ここで手が止まってしまいます。
「おにぎりが4個のっているさらが8さらあります。おにぎりは全部で何個あるでしょう?」
一皿の絵が描いてあるので、『おにぎり』はわかる。『さら』は?という顔をしましたが、これも絵を見て納得。そして「全部っていうのはね・・・」と説明しかけたところで、そんな説明はまだるっこしいとばかりに、4×8=32 答えは32、これでいいんでしょ、と次に進もうとします。答えに『こ』を入れさせる(32個)と、答えには単位が必要ということはいち早く理解。しかし個が何を意味するかには全く関心なし。
そして次の「一そう(艘)のボートに人が5人→6そう→全部で何人?」」という問題も、問題文は全く読まず(もちろん、自分一人では読めないのですが)5×6=30、30の後にはなんて書くの?この手で一気にすごいスピードで5問終わらせ、できた!終わり!
パターン(かけ算して合計を出す)を見抜いて、問題文の数字をそれに当てはめる。理解力の高いA君には、この宿題は楽勝となりました。彼自身もできた!と思ったことでしょう。そして、プリントに書かれている答えは全部正解ですから、学校でも、特に問題視されることはないでしょう。むしろ、良くできたね!といわれるかもしれません。
しかし、A君は日本語の文章題の意味を本当にわかっているわけではありません。「車が一台、自転車が一台あります。タイヤは全部で何個ですか?」「両手にキャンディーを7個ずつ持っています。キャンディーは何個ありますか?」などという問題に出会ったら(足し算問題ですから、すでに出会っている可能性はあります)、おそらく自分一人ではできないでしょう。タイヤ問題は4+2という計算になりますが、4も2も問題文中には出てきません。キャンディー問題も、両手の『両』の意味を知らなくてはできません。このあたりが「数学(の文章題)は国語力(読解力)が鍵を握る」といわれる所以でしょう。
中学生になっても本質は同じです。「周囲の長さが20㎝の長方形。縦r㎝。横の長さをrを使って表しなさい」。これは中1の問題です(答えは=10-r)。20÷2=10→10-rまたは(20-2r)÷2などの方法で求められます。この問題を解くには長方形という言葉を、四角形=辺は4つ、向かい合う辺の長さが等しい、周囲の長さ=縦×2+横×2=(縦+横)×2などと読みかえて(解いて)いく必要があります。この問題に躓いたBさんは、日本滞在年数が長く、年齢相応の日本語力はついている子です。それでも、この読みかえはうまくいきませんでした(自分で言葉に出して説明できない)。中学生になると、使われる言葉、求められる読解力、思考力が一気にレベルアップします。日本人でも苦戦する子は多いです。Bさんとの勉強では、中学の数学=より高度な読解力を痛感しました。
パターンを飲み込み一見できているように見える→しかし実はわかっていない→読解力に問題有り。日本語が不十分な外国につながる子どもたちだけでなく、実は日本人の子どもたちにとっても大きな大きな問題点ではないでしょうか。子どもたちのできた≠わかったをしっかり見極めたいものです(♪)
さて、2年生の宿題を見ていて、ちょっと感じることがありました。A君は来日1年ほど、生活や遊びに必要な日本語はだいぶわかって来ました。いつも非常に元気で、大声であちこちにちょっかいを出すので、大変うるさい!!のですが、その一方で頭の回転が速く集中力もすごく、可能性を感じさせる子です。
2年生のこの時期、算数の宿題は一桁のかけ算(九九)が中心です。宿題プリントの計算問題は、自分で軽々とこなします。日本語の九九は、時々言いよどむことはありますが、何とか言えるようになってきました。しかし、算数の宿題の半分は文章題、ここで手が止まってしまいます。
「おにぎりが4個のっているさらが8さらあります。おにぎりは全部で何個あるでしょう?」
一皿の絵が描いてあるので、『おにぎり』はわかる。『さら』は?という顔をしましたが、これも絵を見て納得。そして「全部っていうのはね・・・」と説明しかけたところで、そんな説明はまだるっこしいとばかりに、4×8=32 答えは32、これでいいんでしょ、と次に進もうとします。答えに『こ』を入れさせる(32個)と、答えには単位が必要ということはいち早く理解。しかし個が何を意味するかには全く関心なし。
そして次の「一そう(艘)のボートに人が5人→6そう→全部で何人?」」という問題も、問題文は全く読まず(もちろん、自分一人では読めないのですが)5×6=30、30の後にはなんて書くの?この手で一気にすごいスピードで5問終わらせ、できた!終わり!
パターン(かけ算して合計を出す)を見抜いて、問題文の数字をそれに当てはめる。理解力の高いA君には、この宿題は楽勝となりました。彼自身もできた!と思ったことでしょう。そして、プリントに書かれている答えは全部正解ですから、学校でも、特に問題視されることはないでしょう。むしろ、良くできたね!といわれるかもしれません。
しかし、A君は日本語の文章題の意味を本当にわかっているわけではありません。「車が一台、自転車が一台あります。タイヤは全部で何個ですか?」「両手にキャンディーを7個ずつ持っています。キャンディーは何個ありますか?」などという問題に出会ったら(足し算問題ですから、すでに出会っている可能性はあります)、おそらく自分一人ではできないでしょう。タイヤ問題は4+2という計算になりますが、4も2も問題文中には出てきません。キャンディー問題も、両手の『両』の意味を知らなくてはできません。このあたりが「数学(の文章題)は国語力(読解力)が鍵を握る」といわれる所以でしょう。
中学生になっても本質は同じです。「周囲の長さが20㎝の長方形。縦r㎝。横の長さをrを使って表しなさい」。これは中1の問題です(答えは=10-r)。20÷2=10→10-rまたは(20-2r)÷2などの方法で求められます。この問題を解くには長方形という言葉を、四角形=辺は4つ、向かい合う辺の長さが等しい、周囲の長さ=縦×2+横×2=(縦+横)×2などと読みかえて(解いて)いく必要があります。この問題に躓いたBさんは、日本滞在年数が長く、年齢相応の日本語力はついている子です。それでも、この読みかえはうまくいきませんでした(自分で言葉に出して説明できない)。中学生になると、使われる言葉、求められる読解力、思考力が一気にレベルアップします。日本人でも苦戦する子は多いです。Bさんとの勉強では、中学の数学=より高度な読解力を痛感しました。
パターンを飲み込み一見できているように見える→しかし実はわかっていない→読解力に問題有り。日本語が不十分な外国につながる子どもたちだけでなく、実は日本人の子どもたちにとっても大きな大きな問題点ではないでしょうか。子どもたちのできた≠わかったをしっかり見極めたいものです(♪)